「仕事をやめようかな。。」今まで何度か頭に浮かんだ言葉です。一生懸命努力したつもりでも思ったように事が進まなかったときや,がっかりしたお客さんを見たときなどは、自分だけで空回りしてしまったことに嫌悪感を覚えて、何のためにがんばっているのかわからなくなったこともあります。それでもいつも気を取り直して「よーし!今度こそは!」と新たな気分で次の仕事に取り組んできました。
十年前、甲状腺にシコリが見つかり、超音波や生検でも良性か悪性か判別しかねる、ということで左半分の甲状腺を切除する手術を受けました。切除して初めて癌かどうかがはっきりする、と言われましたので、手術後まだとても気分が悪いときに、検査の結果を待つ、というとても恐ろしい経験をしました。そのときに「もし癌でなかったら、何か仕事をして社会の役に立とう」と心に決めました。
幸いシコリが良性だったとわかり、いろいろ考えて不動産のリアルターの仕事を選びました。みなさんのおかげで今まで本当に充実した仕事をさせていただいてきました。そして十年たった今年の秋、ふっと触った喉もとに小さなシコリがあるのを見つけました。またしても超音波そして痛~い生検をして、その結果がわかるまで「癌かもしれない」という心配と恐怖の日々です。そんな私の話を聞いて、友人のリアルターのSさんが「きっと大丈夫よ、どんな結果が出ても私がいつでも聞いて支えてあげる」と言ってくれました。そのとき私の心の奥のほうの何かがサラッとと動いたような気がしました。実はSさん自身、甲状腺の癌を持っており、治療しながら子供を出産し、明るく仕事もこなす素晴らしい人です。私の恐怖を百パーセント理解した上で言ってくれた言葉なので身にしみました。
数日後、私のシコリが良性であることがわかったと聞いて、Sさんは自分のことのように喜んでくれました。「家族以外にもこんなに心配してくれる人がいたんだ」という思いが、私の疲れた心をやさしく包んで暖めてくれて、同時に心の底から深い感謝の気持ちがわいて来ました。不思議なことにこの経験を境に毎日がどんどん楽しくなってきて、このごろは何をやっても楽しいんです。心が安定しているので問題が起こってもすぐに解決策が浮かぶし、人間関係もスムーズになり、すべてがうまく回っている感じです。
Sさんの優しい言葉を聞いたときに、私の心の奥で動いたのはいったい何だったのか、その秘密を見つけたくなりました。十年後の小さなシコリが経験させてくれた不思議な秘密を解き明かして、皆さんに分ける仕事がこれからはできたらいいな、とも考えています。
